ジャンルの反復横跳び

宝塚歌劇その他、心惹かれたものについて

美月悠さんご卒業によせて

私の初観劇は宙組のグスタフ三世。六代目トップスター凰稀かなめさんのご卒業公演でした。大千秋楽の前日昼公演、友人に連れられて観劇した日のことを今も覚えています。あれから8年、何も分からない頃に必死でお顔とお名前を一致させ、愛称を覚えたスターさん達は殆どご卒業されました。私も住む場所を変え、初めての贔屓を見送りました。それでもずっと、宙組が好きだ、という気持ちは揺らぎませんでした。

大きな声で言います。宙組の美月悠さんが好きです。

いつの間にか、いつの頃からか、舞台に立つ さおさんのお姿を拝見することは、私にとって「宙組を観る」上で不可欠なことでした。さおさんを見たくてオペラグラスを覗く時に感じるあたたかい感情は、贔屓や他の方に対するものとは少し違っていました。ウィンクをされたらときめきますし、かっこよさに惚れ惚れもするのですが、家族愛のような親しみに近いものとでもいうのでしょうか。観劇後に印象的なシーンを反芻する帰り道、ふと「今日もさおさんがすてきだったな。」とじんわり思い出すことが多かったんです。

さおさんご卒業公演である『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-/Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』、去る21日にマイ楽を終え、帰宅してスカイステージの番組『Memories of 美月悠』を再生しました。その中で、さおさんが理想の男役像について仰っていました。

まずはかっこいい男役でありたい。台詞がたとえ無くても、舞台に立つ時間がたとえ短かったとしても、お客様の印象に残る存在感のある男役に私はなりたくて、それを目指してここまでやってきた。

たとえば。

『Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』幕開きの場面。紫スーツにハットを被り、白のマフラーを首にかけた男役さん7人が現れた時、真ん中寄り下手にいらっしゃるのがさおさんです。ハットの下から覗く目の表情が、スッと細めたり微笑んだりとものすごく魅力的です。
カンカンでの弾ける笑顔も、
一転してフォレ・ノワールで鞭を持ち、大路りせくんと泉堂成くん美少年と絡んで放つ妖しい色気も、
中詰めラテンで星月梨旺さん七生眞希さんとバチバチにキめて踊ってくださってからの花音舞さんとの熱いキスも、
キャンディー・ケーンのシルエットで分かるお姿と花宮沙羅ちゃんとの尊いペアダンスも、
虹の場面は今書いているだけで泣いてしまう、「雨が降らなければ虹は出ない」という歌詞とさおさん達退団者の皆さまが描く虹色も、
フィナーレC、上手から二番目に登場して大階段を上るところから、顔の角度から肩の下げ方から身のこなしの全てがかっこいい黒燕尾姿も。

こんなにも素敵で、ずっと見ていたいと思うスターさんです。さおさんが追求された今の男役 美月悠さんが、私は大好きです。

今日で男役のさおさんのお姿を観られるのが最後だなんて、まだあんまり信じられていなくて。何を置いてでも遠征に行くべきだったと後悔もあるけれど。最後の公演が、そしてご卒業後の人生が、さおさんにとって幸せなものでありますようにと願いを込めて。ご卒業おめでとうございます。

さおさんがご卒業された後も、宙組のファンでいます。