ジャンルの反復横跳び

宝塚歌劇その他、心惹かれたものについて

ゆけ、モダンガールズー花組『はいからさんが通る』感想

2020年10月17日。2月15日以来8か月ぶりに、東京宝塚劇場に足を運びました。

少女マンガ『はいからさんが通る』が原作の、小柳奈穂子先生による花組公演です。公演が再開された7月の初日公演も、9月の宝塚大劇場千秋楽公演も、楽天TV様で配信を視聴していたので話の筋は把握済みで、今回は水美舞斗さんはじめ、気になる方をオペラグラスでロックオンしつつの観劇でした。そこで。音くり寿さん演じる北大路環にときめいて、心奮い立って、元気をもらって帰ってきたので、彼女について語りたいのです。

北大路環は、華優希さん演じる花村紅緒の女学校の同級生であり、柚香光さん演じる伊集院忍の幼なじみ。宿題を忘れた紅緒を叱る先生の「あなたのような反抗的なひとをもらってくれる殿方などあらわれない」という言葉に対して、凛と反論します。

私たちは、殿方に選ばれるのではなく、私たちが殿方を選ぶのです。この方を反抗的と言うのなら、私も、ここに一緒に立っています。

環は伊集院少尉と紅緒の力強い協力者(初めは、幼なじみの伊集院少尉が好きだったからか二人が結婚しない方向に持って行こうともしますが…)であり、新聞記者として働くさまは眩しく、また水美舞斗さん演じる鬼島軍曹に惹かれていく様子がとてもかわいいです。特に二幕はじめの曲、環を筆頭に女性たち(と蘭丸)が舞い踊る曲が、大好き。音楽配信が始まったらこの曲は欲しいな~と思っています。

街を行く 私たち モダンガールズ
足音を響かせて 踊るはデモクラシー
自由とプライドを 小脇に抱え
支える手はいらないの ひとりで立てる

まず音くり寿さんの歌声が好きなんですよね。環という役に合わせてか、柔らかすぎず高すぎない声は聞き取りやすく、それでいてかわいくて、何より上手い。淑やかで凛とした微笑みに「かわいい~!!」と叫びたくなります。

続く「料理に掃除お裁縫 くだらないわ/政治と科学と未来が私を呼ぶ」という歌詞は少し極端すぎる気もしますが、「料理・掃除・裁縫は女の、政治・科学・未来は男の役目という考えは古いわ、女だって政治・科学・未来の当事者だ」ということなのだと思います。冒頭の環の言葉からもわかる通り、彼女は女性の地位を向上させたいと思い働いていた一人であり、紅緒と同じく「はいから」な人です。当時の日本で女性がそうあることは今よりもずっと難しく、環は闘うこともあったのでしょう。けれど彼女は女であることを捨ててはいません。二幕で新聞記者として働く彼女は赤い帽子に赤いスカーフ、赤いワンピースに茶色の低めヒール靴で大正の世を生きていて、かわいいを楽しんでいるように思います。そこがとても好き。

恋も人生も 渡さない
昨日よりも明日を見て 命を燃やそう
この身を焦がして

渡さなくて!いいんだよね!!環さん!って全力で頷いた。物語のラスト、鬼島が満州へ旅立ったと伊集院少尉から聞くやいなや、くるりと振り返り来た道を引き返す環。紅緒に呼び止められて微笑み、振り返ると「会社へ。満州支社への転勤を希望するわ。」とキッパリ。「婚約?そんなもの、家出しちゃえば向こうだって諦めるわ。…私、鬼島さんが好きよ。」「私は、誰かに選ばれるのではなく、私が誰かを選ぶのよ。」環の言葉は彼女の生き方そのもので、きっとすぐに転勤して鬼島さんと再会して、鬼島さんは押し切られるんだろうな~まんざらでもなさそうだったしな~と、幕が下りた後の二人の未来を思って幸せな気持ちになります。

フィナーレでも、このモダンガールズの歌は歌われます。今度は華雅りりかさん、春妃うららさん、朝月希和さん、音くり寿さんの4人のモダンガールズが中心です。花娘最高。カラードレスをポイント使いの黒が引き締めてくれていて、ショートカットのヘアアレンジも相まってとっても魅力的です。

恋も人生も 命懸け
優しさより激しさで この身焦がしたい
命を燃やして

男役のスター制度が確立している宝塚歌劇団にあって、今回のモダンガールズたちのように、環のように、娘役さんがその方ならではの魅力―かわいさや美しさ―を突き詰めているのを見ていると、嬉しくてときめきます。環が「ひとりで立てる」と歌い、実際ひとりでも立てる彼女が好きな人への気持ちをまっすぐ言葉にするところが眩しくて、大好きです。

 私も、宝塚歌劇団の娘役さんのように、かわいくあること・美しくあることを目指したい。同時に、ひとりで立ちたい。恋も人生も渡さずに、自分らしく生きていきたい。久しぶりの観劇で勇気をもらって、元気になって、大切な友達にこの気持ちを伝えたら、「私は格好いい女性のことを凛々しく語るあなたが好き」と言ってもらえて更に嬉しかった。

そんな昨日の気持ちを忘れずに、明日からも一週間がんばります。