ジャンルの反復横跳び

宝塚歌劇その他、心惹かれたものについて

拝啓 七海ひろき様

2019年3月24日。花咲き乱れる、春。

七海ひろきさん。

七海さんが男役として生きる、最後の日の朝になりました。今、どんな気持ちでいらっしゃるでしょうか。

まずは、七海さんが私のご贔屓になるまでをお話しさせてください。

私が七海さんに出会ったのは、宙組の前トップスター:朝夏まなとさんのBrilliant Dreams+NEXT最終回でした。アザラシの物真似を自己紹介で披露した七海さん。朝夏まなとさん、蓮水ゆうやさん、桜木みなとさん、和希そらさんと一緒にオリジナルダンスを練習していて……汗びっしょりで、「ツタンカーメンひろきです」と言った七海さんを忘れられません。思えば七海さんをはじめてみたこの時から、七海さんはずっと気になる存在でした。大学生になって関西に住んだ私が、大事な友人に色んなことを教わりながら、徐々に宝塚歌劇を大好きになっていく間。七海さんはずっと近くに感じる存在でした。宙組の前々トップスター:凰稀かなめさんが退団される公演で、銀橋を渡る3人の真ん中で歌っていた七海さんを見たのが、初めて直接お目にかかった機会でした。あの日からはもう4年が経つのですね。

ところで、私は宙組贔屓だったので、七海さんが星組に移ってから暫く、舞台の上の七海さんをみにいけませんでした。宙のグスタフから星のスカピンまで、実に2年ほどのブランクです。組替え直後は辛い時期もあったようだと聞いたことがあるので、その時に応援できなかったことを少し悔やむ気持ちもあります。 

私が七海さんをご贔屓として過ごすヅカファン生活は、2017年3月11日に宝塚大劇場で『スカーレット・ピンパーネル』を観劇した日からはじまりました。七海さんともう一度出会って、ご贔屓にすると決めた日。あの日から今日まで、2年と13日しか経っていないのですね。

観劇をしていて、気が付いたら七海さんばかりを目で追っていました。七海さんが演じたのは、フランス革命後、政府の舵を取り次々に貴族を粛正したロベスピエール。今回の星組公演ではこれまでの公演より役の重要度が上がり、初めてソロナンバーが追加されたのでした。

ロベスピエールの焦燥」を歌い上げるロベスピエールからは、自分の理想とするフランスと現実とのギャップに苦しむ様子が切々と胸に迫ってきました。自分のやってきたことが間違いだったのではと微かに思いながらも、かつての仲間までも粛正してしまった今、後戻りもできず……そんな複雑な心境が感じられました。主人公パーシーから見れば、そして歴史的にもロベスピエールの政治は悪だったのかもしれません。しかし、正義は一人一人違うこと/善悪は歴史の勝者が決めるものでしかないのだと、七海さん演じるロベスピエールから教わった気がするのです。お芝居だけでなく、フィナーレでの男役群舞(お揃いの黒燕尾服を着てビシッと揃ったダンスを披露してくれる場面)での七海さんも、ひときわ輝いて見えました。誰よりも楽しそうに踊っているようで、目が離せませんでした。

「私は七海さんが好きだ。七海さんをご贔屓として応援し続けよう。」

 帰り道にそう決めました。宝塚のあれこれを教えてくれた友人に初めてのご贔屓のことを伝えると、「結構最初からかいちゃん(七海さんの愛称)のこと好き好きって言ってたし、納得(笑)」と言ってもらえました。

それからの日々は楽しかったです。Twitterで七海さんファンとして同じく七海さんを好きなヅカファンの方とお話をし、雑誌やテレビでの七海さんの様子に心ときめかせて。観劇した後しばらくは劇中曲が頭の中で流れているし、落ち込んだときもキラキラな宝塚のショーの映像を観れば元気になれました。


七海さん。この後にも、たっくさん書きたいことを考えていました。

七海さんが主演として「生まれ変わりかもしれない」と評するほど考えに共感したという稀代の軍師:竹中半兵衛様を演じられた日のこと。

インド映画を元にした公演に友人と行ったとき、「ムケーシュ役(七海さんの役)の人が好きなの?気持ちが漏れてたよ(笑)」と言われたこと。

七海さんが好きだという気持ちが繋いでくれた友人がいて、その子と今日の千秋楽ライブビューイングを一緒に見届けられること。

七海さんが宝塚で、敏腕プロデューサーとしての能力を存分に発揮してくださったこと。(気になる方はBrilliant Dreams七海ひろき または ヅカ♡キュン で検索)

宝塚歌劇団89期生男役5人による『ICHIGO ICHIE』の時に、七海さんが同期と一緒にいるときならではの、ほわほわ空気をまとっていたこと。(89期生娘役を含む在団生7人のうち、2019年中に七海さん含め4人が退団することが決まりましたね。)
ほかにも、もっともっと。

けれど、どれだけ言葉を重ねてみても、
七海さんのことが大好き
以上に、伝えられる言葉はないように思います。


七海さんのお芝居が大好きです。
少女漫画やアニメが好きなオタクジェンヌだからこその、役に関する資料を読み込んで行う深い役作り。心の込もった、熱い、七海さんと役が一体となって発される台詞に、幾度感動させられたか知れません。

七海さんの歌が大好きです。
決して、歌うまジェンヌというわけではなかったと思います。けれど、男役を究める人だけの独特の低音に、感情で色を変える声。

七海さんの所作が大好きです。
貴族なら優美に、水夫なら少し粗雑に、ピュアな役なら無垢に、色男なら雄々しく。「今度はどんな七海さんで魅了してくれるのだろう」といつもドキドキしていました。黒燕尾で踊るときの肩の落とし方、目線の下げ方…そうしたひとつひとつにも、七海さんが積み重ねてきた男役の美学を感じられる気がします。

そして、特に今回のショーで、両手で狙い撃ちしたり、会場全体にバラまいたり、ねっとり濃厚だったり……多種多様な投げキスで観客(と娘役さん)を虜にする七海さんに、6回、6通りのトキメキをいただきました。

七海さんが大好きです。
応援してくれてありがとう、そう言ってくださるスターさんは沢山います。でも、「あなたに出会えて幸せです」と、私たち一人一人に伝えてくださるスターさんは、私には七海ひろきさんだけです。

七海さんに出会えたこと、長い男役人生の一部ですが、全力で応援できたこと、心震える瞬間を何度も味わえたことが、とっても幸せです。


2年と13日分の愛を込めて、本当に本当に、ありがとうございました。